「ねぇ、マイカ。お仕事終わった? もし、終わってお時間があるなら、このまま別荘に滞在しませんか?」
「ありがとうございます。シルフィ様のお誘いうれしすぎますわ。ぜひ!」
「いや、無理だろ。仕事があるから昼前には帰してほしいって、商会の人間から聞いているぞ」
「うっ。なぜ、それを」
マイカはブリキのロボットのように、硬い動きでアイザックの方を見ると、彼は深いため息を吐き出す。
「君の後を追ってきた君の部下がなげいていたぞ。いま、別室で朝食を取っている」
「まさか追っ手が来ているなんて。どんな人ですか?」
「この間、うちに絵を持ってきてくれた人だな」
「……その人、私の右腕ですわ。あー……なら、逃げられないわね」
絶望的な声をあげながら、マイカは両手で顔を覆ってうつむく。
「アイザック、マイカから絵を買ったの?」
「ちょうどシルフィが好きそうないい絵があったから、買ったんだ。今度、うちに見にきてくれ」
アイザックは、私の問いに微笑みながら答えてくれた。
「うん。ぜひ! 楽しみにしているね」
「あぁ」
どんな絵なのだろう。すごくわくわくするわ。風景画かしら?
私とアイザックのやり取りを聞くと、マイカはピクリと眉を動かし私越しにアイザックを見た。
あっ、空気が……。
メイドカフェで何度も感じたことがあるのでなんとなくわかる。これから、ふたりは絶対に荒れる。