──少し眠れたかな。

 カーテンの隙間から漏れている朝日が室内に光を届ける中、窓越しにかわいらしい小鳥のさえずりが聞こえる。
 浅い眠りだったかもしれないけれど、眠れただけでよかった。

 私はベッドに横たえている体をゆっくりと起こし、隣に眠っているマイヤーヌを起こさないように静かに抜け出て、洗顔や着替えなどを済ませ身支度を調えた。

 喉が渇いているので水をもらいに廊下へ出た。「おはよう」という声をかけられ、私は悲鳴をあげてしまいそうになるのをぐっとこらえる。

 全力疾走した時のように速まっている心臓の鼓動。
 それを落ち着かせるように胸を押さえながら、声のした方に顔を向けるとアイザックの姿があった。
 扉の横で壁に背を預けて腕を組み、こちらを見ている。

「お、おはよう……もしかして、夜通しで見張っていてくれたの?」
「あぁ」
「ごめんなさい! 全然、私気づかなくて」
 襲撃の件で忙しかったのに、体を休めないで見守ってくれていたなんて。
 私だけ眠ってしまって申し訳なく思った。

「ねぇ、アイザック。少し休んで。立っているだけでも疲れるでしょ?」
「これくらいなんともないよ」
「でも、少し休んで」
「あと一時間後くらいにサロンでウォルガーと合流する予定なんだ」
「なら、少しでも……」
 私は彼の腕に手を添えて懇願するように言うと、彼はしばしなにか考えると口を開く。

「なら、少しサロンで仮眠を取ろうかな。シルフィ、膝を貸してくれるか?」
「お安いご用よ。でも、ソファじゃなくてちゃんとベッドで休んだ方がいいと思うわ」
「ソファで十分だよ。お願いできる?」
「えぇ。じゃあ、サロンに行きましょう」
 私とアイザックは一階にあるサロンへ向かった。