「目が覚めたか、人の子よ」



「聖人たる女王よ」



「敬虔たる女王よ」



「こ、ここは……」



 できればもう二度と断頭台など試したくはないなと思いながらアリスタは痛むような気がする首元をさすり顔を上げた。

 はっとして再度首に触れる。繋がっている。

 自分で見たわけではないけれど、意識が飛んだのだからおそらくあのあとすぐに自分は死んだのだ、断頭台によって、生まれてからずっと自分のものであった胴体と首が別れを告げて。



 あたりは民衆が熱狂していたあの広場ではなく、大きく滑らかな石の地面と何もないどこまでも白い闇である。

 真四角の広場の中心に自分はいて、それを囲むように人ならざる姿のものたちが自分を囲んで見下ろしていた。

 人ではないが、見知らぬ姿でもない。時に竜であったり鳥であったり花であったり水であったり、その姿こそさまざまあれど自国で語り継がれる神たちの姿である。

 神殿の壁画にも描かれたその姿を物心ついたときから朝昼晩と三回は目にしていた。

 信じる者は救われる。ありきたりな教義かもしれないが、自分の生きた国ではこうして彼らを信仰したものだ。