「…………婚約を、白紙に?」
「そうなんだ、すまないクロエ」
どうして、どこで、なにが起きているのかさっぱりわからない。
だって今世では確実に結ばれると言っていた。
そういう運命なのだと知っている。
もしかしてほかに好きな人ができた?政略的により優位な相手が現れた?
あったとしてもそうなればもう隣国の王族とかそんな次元になってしまうではないか。勝ち目がない。
絶対に手放したくない、離れたくない。
こんなに愛しているのに生きていてもそばにいられないのであれば何のために自分は転生までしたというのだろう。
神託といいどうしてこうなにもかもおかしなタイミングでかさなってくるのだろう。
「某国の」
息苦しそうに彼は一言そう言ってこちらを見た。その目は昨日までと変わらない、私を愛している目だった。