自分の子供たちにもだいぶ無理をさせたのだろう。

 あの子たちはみな幽閉で済んだはずだがまだ生かされているのだろうか。

 この三年間で他国のことも調べてはみたが、そもそもあの国は私の死後、諸外国からつまはじきにあったらしく現状の仔細までは探れなかった。

 〈失敗〉と〈損失〉……神々の言葉は嘘ではないらしい。



 子供たちのことが気にかからなかったのかといえばそんなことはない。

 だが積極的に自分を貶しにかかったくせにあっさり民衆に裏切られたのだから立派なことだ。最後までアリスタの身を案じていたのはルネだけだった。

 夫であった国王さえも、処刑の間際に女王の首を差し出すと命乞いをしたものだ。

 だから今世は、せめて、まっとうに幸せになってほしいものだ。この男には。



「クロエ、新しい本がきたんだ。図書館に行こう」



「はい、リシャール様」



「クロエは本当に俺より年下なのかといまだに思うよ」



「まあ、リシャール様こそ。もう当時の自分をゆうに超えてしまったと陛下がおっしゃっていたではありませんか」



 引っ込み思案で体も弱いなどと言われていたはずのリシャールだが、クロエとかかわるようになって見る見るうちに明るく活発な少年になった。

 かつてのルネのように、とはいかないが別人とは言えこれだけ明朗闊達な性格であれば国民からの支持も厚いだろう。

 派閥はあれど、この国の王族とて一枚岩ではないらしく貴族たちの頭を押さえていられる策が展開しているようだ。

 さすがにそこまでは首も突っ込めないが国王や父がなにかしているのは見ていればわかる。

 高位貴族以下男爵家までがうまいこと掌で転がされているのだろう。

 あんな美丈夫もなかなかどうして執政には腹黒い面があるようだ。まあ、権威争いなんてそんなものか。