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「美花、そろそろ行こうか。」
朝ごはんを終えると、田宮さんが、腕につけたアップルウォッチを確認しながらそう私に声をかけた。
「そ、そう…ですね。」
まだ…7時前だけど。どうしてそんなに早くここから連れ出したいのだろうか。
この後の予定がいっぱいだとか?でもそれであれば、わざわざ私を迎えに来る必要もない気がするのだけどな。私にはS Pがついていることだし。
疑問を抱いたまま、帰り支度をしミニクーパーに鞄を乗せた。
「美花!」
トランクを閉めた所で、背後から声をかけられる。
「あ…武利。おはよう。」
「もう帰るのか?」
「彼女は今日から新居に引っ越すので。色々とバタバタしますからね。」
私の横に田宮さんが並び、「おはようございます」と武利に挨拶し、穏やかに微笑んだ。それに、少し会釈をした武利はまた私の方へ向き直る。
「…随分慌ただしいんだな。折角帰って来たんだからゆっくり実家に居たいんじゃないの?それにほら、またあの連中がおじちゃん達の所に押しかけて来たりしたら…。」
「そこは、S Pを付けさせていただいていますし、弁護士にもすぐに連絡がつく様になっていますから。」
私が答える前に田宮さんが口を挟む。そんな田宮さんに武利は、怪訝な顔をむけた。
「…俺は美花と話をしているんです。少し黙っていて貰えませんか?」
「それは失礼しました。」
た、田宮さん…睨まれているのに、変わらない微笑みが…かえって怖い。そして、武利の苛立ちを煽っている気がする。
「美花、俺さ…おじちゃん達や美花ともう一度きちんと話がしたいんだ。だから、今日もう少しここに残れない?」
話…か…。武利が謝る必要は本当にないと思うし、お父さん達も何度もそう伝えているのにな。
昨日色々と急に話が色々と進んで、田宮さんがこうして来てくれたからこれからの事を田宮さんとも話をしなくてはいけないと思うし。
「武利、また日をあらため…」
「でしたら、新居に引っ越した後でゆっくりと話をしましょう。今日の今日でいきなりは予定もありますので難しいと思います。」
か、被せた!
いや、言いたい事は大体その通りだけれども。今武利が「口を挟むな」と睨みを利かせたばかりなのに…。
案の定、武利の眉間のシワが濃くなり、田宮さんを見上げるその目が据わる。
「や、だから…あんたさ…」
「あ、あの…さ、武利!お父さんもお母さんも私も…本当に大丈夫だから!心配してくれてありがとうね。今日はこの後予定があるし、また改めてゆっくりと話をしよう?い、いきましょう!田宮さん!」
これ以上対面させていると、田宮さんの胸ぐらでも掴むのではないかという勢いの武利にそう言って、話を半ば無理やり切って、田宮さんの背中を押した。
「武利、またね!」
「ああ…。」
未だ怪訝な顔のままの武利に別れの挨拶をして、ミニクーパーに乗り込む。同時に乗り込んだ田宮さんに目を向けたら、鼻歌まじりでご機嫌にシートベルトをしている。
一体…何を考えているのか。
会話にあんな風に入り込み、不快感を与えるなんて。昨日お会いしたばかりだけれど田宮さんらしくない気がする。わざとなのではなかろうか…と思うんだけど。
「あの…田宮さん。」
「んー?」
「借金は武利のせいではありません。」
ミニクーパーが赤信号で静かに止まる。さすがは高級車。静かで揺れをあまり感じない。それとも田宮さんの運転がお上手なのだろうか。ともかく、クッと笑った田宮さんの横顔は、このお洒落で上品な車にぴったりなほど、柔らかく整っていて…しかもちょっと可愛らしい。
「バレてた?わざとだって。」
「あれはいくら何でもあからさまです。」
ムーッと口を尖らせて見せた私に少し目をやると前を向く。その少し厚めのすらりとした大きな掌がポンと頭の上に乗った。
「大事な花嫁を守るためだよ。」
「武利は大丈夫ですよ…。」
「そう?」
武利の何を警戒しているのだろうか。それは分からないけれど、車が再び走り出すと、田宮さんはそれ以上武利の話をすることはなかった。
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「美花、そろそろ行こうか。」
朝ごはんを終えると、田宮さんが、腕につけたアップルウォッチを確認しながらそう私に声をかけた。
「そ、そう…ですね。」
まだ…7時前だけど。どうしてそんなに早くここから連れ出したいのだろうか。
この後の予定がいっぱいだとか?でもそれであれば、わざわざ私を迎えに来る必要もない気がするのだけどな。私にはS Pがついていることだし。
疑問を抱いたまま、帰り支度をしミニクーパーに鞄を乗せた。
「美花!」
トランクを閉めた所で、背後から声をかけられる。
「あ…武利。おはよう。」
「もう帰るのか?」
「彼女は今日から新居に引っ越すので。色々とバタバタしますからね。」
私の横に田宮さんが並び、「おはようございます」と武利に挨拶し、穏やかに微笑んだ。それに、少し会釈をした武利はまた私の方へ向き直る。
「…随分慌ただしいんだな。折角帰って来たんだからゆっくり実家に居たいんじゃないの?それにほら、またあの連中がおじちゃん達の所に押しかけて来たりしたら…。」
「そこは、S Pを付けさせていただいていますし、弁護士にもすぐに連絡がつく様になっていますから。」
私が答える前に田宮さんが口を挟む。そんな田宮さんに武利は、怪訝な顔をむけた。
「…俺は美花と話をしているんです。少し黙っていて貰えませんか?」
「それは失礼しました。」
た、田宮さん…睨まれているのに、変わらない微笑みが…かえって怖い。そして、武利の苛立ちを煽っている気がする。
「美花、俺さ…おじちゃん達や美花ともう一度きちんと話がしたいんだ。だから、今日もう少しここに残れない?」
話…か…。武利が謝る必要は本当にないと思うし、お父さん達も何度もそう伝えているのにな。
昨日色々と急に話が色々と進んで、田宮さんがこうして来てくれたからこれからの事を田宮さんとも話をしなくてはいけないと思うし。
「武利、また日をあらため…」
「でしたら、新居に引っ越した後でゆっくりと話をしましょう。今日の今日でいきなりは予定もありますので難しいと思います。」
か、被せた!
いや、言いたい事は大体その通りだけれども。今武利が「口を挟むな」と睨みを利かせたばかりなのに…。
案の定、武利の眉間のシワが濃くなり、田宮さんを見上げるその目が据わる。
「や、だから…あんたさ…」
「あ、あの…さ、武利!お父さんもお母さんも私も…本当に大丈夫だから!心配してくれてありがとうね。今日はこの後予定があるし、また改めてゆっくりと話をしよう?い、いきましょう!田宮さん!」
これ以上対面させていると、田宮さんの胸ぐらでも掴むのではないかという勢いの武利にそう言って、話を半ば無理やり切って、田宮さんの背中を押した。
「武利、またね!」
「ああ…。」
未だ怪訝な顔のままの武利に別れの挨拶をして、ミニクーパーに乗り込む。同時に乗り込んだ田宮さんに目を向けたら、鼻歌まじりでご機嫌にシートベルトをしている。
一体…何を考えているのか。
会話にあんな風に入り込み、不快感を与えるなんて。昨日お会いしたばかりだけれど田宮さんらしくない気がする。わざとなのではなかろうか…と思うんだけど。
「あの…田宮さん。」
「んー?」
「借金は武利のせいではありません。」
ミニクーパーが赤信号で静かに止まる。さすがは高級車。静かで揺れをあまり感じない。それとも田宮さんの運転がお上手なのだろうか。ともかく、クッと笑った田宮さんの横顔は、このお洒落で上品な車にぴったりなほど、柔らかく整っていて…しかもちょっと可愛らしい。
「バレてた?わざとだって。」
「あれはいくら何でもあからさまです。」
ムーッと口を尖らせて見せた私に少し目をやると前を向く。その少し厚めのすらりとした大きな掌がポンと頭の上に乗った。
「大事な花嫁を守るためだよ。」
「武利は大丈夫ですよ…。」
「そう?」
武利の何を警戒しているのだろうか。それは分からないけれど、車が再び走り出すと、田宮さんはそれ以上武利の話をすることはなかった。
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