「悪かったな、急遽やってもらって。」
「良いよ。田宮さんの頼みだし。でも次回はオフィスでお願いします。目と鼻の先に住むんだし。」
高山さんが、ニコッと私に笑った…けれど。高山さんのオフィスに近い場所…。あれ?確か高山さんのオフィスがある所って、あの有名な…
名刺を改めて見て確認。
“…ベリーヒルズビレッジオフィスタワー”
『セキュリティのしっかりした場所に引っ越す』
…いや、待って?新居って、もしかして…ベリーヒルズビレッジ?
あの、世界的に有名な会長、社長や旧財閥の方々が暮らしていたり、超一流の会社が入っていたりするという…。
思わず怪訝な顔で田宮さんを見てしまう。
確かに私、田宮さんの前に現れた時、鬼気迫るものはあった。けれどそれにしたって…。
「美花、安心しろ。あそこは、世界の天才が作り上げたセキュリティシステムに管理される場所だ。どんなハッキングも許さないし、人的侵入もありえない。あそこに居る限り、身の安全は約束されている。」
だから、やり過ぎ!
田宮さん、よく考えてください!私…私ですよ?
偉人でもセレブでもなんでもないんですって…表向きだけの奥さんにそこまでやる?
もしかして…何でも完璧にやらないと気が済まないタイプとか。どうしよう、そうだったら。いたって普通の感覚の私がそこまでのストイックについて行けるかどうか…。
「世界の天才は言い過ぎでしょ。俺、ただのコンピューターオタクだもん。」
椅子の背もたれを前にして、ニコニコとしながらこっちを見ている高山さん。
「あそこは病院も入っているからね。余計にシステム管理はしっかりやらないと。」
飄々とそう行っているけど…つまり、そのベリーヒルズビレッジの通信関係一切を管理しているのが、高山さんの会社…という話…。
そうか、それは、パソコン一台位、あっというまに解析できるわけだ。
「ありがとう、シン、助かった。」
「いーえ。あ、俺そろそろラジオ局行かないと。」
「何だよ、お前ラジオ番組まだやってるのか?」
「うん。地方局だけどね。そこのディレクターがさ…ってまたその話は今度にするわ。」
「彼女でもできたか?」
「うーん、どうだろうね。」
「あんまり、振り回すなよ。」
…田宮さんに振り回すなと言われる高山さん。
皆様どれだけ女性関係が色々あるのだろうか。
などと失礼な事を思いながら田宮さんに連れられ地下駐車場へと行くと、中田さんが待っていた。
「お疲れ様です、田宮さん。はい、鍵。」
「おう、ありがとう。じゃあ、ミニクーパーはS Pに見てもらったら、その後修理に出してくれ。」
「了解です!」
ミニクーパーは修理に?
小首を傾げたら、田宮さんはキュッと唇の両端を上げて、笑って見せ、ポンと私の頭に掌を乗せる。
「美花、行こうか。」
促されて行った先に待っていたのはベンツのマークが付いた…これって、『ゲレンデ』という名前のやつだよね。車にはあまり詳しくない私でも知っている人気のもの。これも田宮さんの車なのかな?
「どうして乗り換えたんですか?」
スーツケースを田宮さんが積み込んでくれたのを見届けてから助手席に乗り込む。シートベルトをして間もなく、スーッと車が発車した。
「まあ…“念のため”。美花の部屋に違和感があったし、パソコンに侵入を試みた奴がいた。ということは、ミニクーパーを追いかけられていてもおかしくないだろ?俺たちがホテルに居る間に何か仕掛けられているかもしれないし。」
「ま、まさか…そんな事…。」
「まあ、用心にこしたことはない。」
穏やかにそう話す田宮さん。
そうか、この人はそういう世界で生きてきたんだ、きっと。
有名になればなるほど、狙われることだって嫉妬の対象になることだって多い。そこを切り抜け、ここまでやってきた。
思わずキュッと唇を噛みしめた。
…私が、足を引っ張らない様にしないと。
セレブの世界を知らない私が完璧にというのは無理な話だけれど、努力してなるべく隣に妻として居られる様にしよう。
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「良いよ。田宮さんの頼みだし。でも次回はオフィスでお願いします。目と鼻の先に住むんだし。」
高山さんが、ニコッと私に笑った…けれど。高山さんのオフィスに近い場所…。あれ?確か高山さんのオフィスがある所って、あの有名な…
名刺を改めて見て確認。
“…ベリーヒルズビレッジオフィスタワー”
『セキュリティのしっかりした場所に引っ越す』
…いや、待って?新居って、もしかして…ベリーヒルズビレッジ?
あの、世界的に有名な会長、社長や旧財閥の方々が暮らしていたり、超一流の会社が入っていたりするという…。
思わず怪訝な顔で田宮さんを見てしまう。
確かに私、田宮さんの前に現れた時、鬼気迫るものはあった。けれどそれにしたって…。
「美花、安心しろ。あそこは、世界の天才が作り上げたセキュリティシステムに管理される場所だ。どんなハッキングも許さないし、人的侵入もありえない。あそこに居る限り、身の安全は約束されている。」
だから、やり過ぎ!
田宮さん、よく考えてください!私…私ですよ?
偉人でもセレブでもなんでもないんですって…表向きだけの奥さんにそこまでやる?
もしかして…何でも完璧にやらないと気が済まないタイプとか。どうしよう、そうだったら。いたって普通の感覚の私がそこまでのストイックについて行けるかどうか…。
「世界の天才は言い過ぎでしょ。俺、ただのコンピューターオタクだもん。」
椅子の背もたれを前にして、ニコニコとしながらこっちを見ている高山さん。
「あそこは病院も入っているからね。余計にシステム管理はしっかりやらないと。」
飄々とそう行っているけど…つまり、そのベリーヒルズビレッジの通信関係一切を管理しているのが、高山さんの会社…という話…。
そうか、それは、パソコン一台位、あっというまに解析できるわけだ。
「ありがとう、シン、助かった。」
「いーえ。あ、俺そろそろラジオ局行かないと。」
「何だよ、お前ラジオ番組まだやってるのか?」
「うん。地方局だけどね。そこのディレクターがさ…ってまたその話は今度にするわ。」
「彼女でもできたか?」
「うーん、どうだろうね。」
「あんまり、振り回すなよ。」
…田宮さんに振り回すなと言われる高山さん。
皆様どれだけ女性関係が色々あるのだろうか。
などと失礼な事を思いながら田宮さんに連れられ地下駐車場へと行くと、中田さんが待っていた。
「お疲れ様です、田宮さん。はい、鍵。」
「おう、ありがとう。じゃあ、ミニクーパーはS Pに見てもらったら、その後修理に出してくれ。」
「了解です!」
ミニクーパーは修理に?
小首を傾げたら、田宮さんはキュッと唇の両端を上げて、笑って見せ、ポンと私の頭に掌を乗せる。
「美花、行こうか。」
促されて行った先に待っていたのはベンツのマークが付いた…これって、『ゲレンデ』という名前のやつだよね。車にはあまり詳しくない私でも知っている人気のもの。これも田宮さんの車なのかな?
「どうして乗り換えたんですか?」
スーツケースを田宮さんが積み込んでくれたのを見届けてから助手席に乗り込む。シートベルトをして間もなく、スーッと車が発車した。
「まあ…“念のため”。美花の部屋に違和感があったし、パソコンに侵入を試みた奴がいた。ということは、ミニクーパーを追いかけられていてもおかしくないだろ?俺たちがホテルに居る間に何か仕掛けられているかもしれないし。」
「ま、まさか…そんな事…。」
「まあ、用心にこしたことはない。」
穏やかにそう話す田宮さん。
そうか、この人はそういう世界で生きてきたんだ、きっと。
有名になればなるほど、狙われることだって嫉妬の対象になることだって多い。そこを切り抜け、ここまでやってきた。
思わずキュッと唇を噛みしめた。
…私が、足を引っ張らない様にしないと。
セレブの世界を知らない私が完璧にというのは無理な話だけれど、努力してなるべく隣に妻として居られる様にしよう。
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