そんな陽斗を庇って車に轢かれたのが……蝶子だった。

交通事故だった。

そう……蝶子は陽斗の犠牲になって死んだのだ。

即死だった。

蝶子の身体と陽斗の手には赤黒い血が滴り落ちた。

蝶子の身体を揺すっても目が覚めることはなかった。

次第に蝶子の身体は冷たくなって二度と目を覚ますことはなかった。

蝶子は陽斗に笑いかけることはなかったんだ。


蝶子が死んだと発覚して陽斗を庇って死んだと知った蝶子の両親は陽斗を責めることはしなかった。

『蝶子を返せ』と罵ることもしなかった。

ただ、蝶子の両親はすすり泣き

陽斗に向かって…………

『無事でよかった』としか言わなかった。