「無理。私には、難しい世界だった。家に帰って
今日の復習しないと。それにテスト勉強もあるから」


ゲームセンターに入った直後の一言。


音はうるさいし、あきらかに不良がたくさんいて怖い。やっぱり私にゲームセンターデビューは早すぎた。


「雨音、待って。慣れれば、こんなの平気だって」


「いやだ、帰る!」


お店を出ようとしたら、片桐くんが私のスクール鞄をグイッと引っ張る。


肩にかけていたせいで、私の重心も片桐くん側の方へ身体が傾く。


楽しみにしてたけど、前言撤回。
やっぱり片桐くんはチャラいし、こんながやがやギラギラしてる場所は私には合わない。


「なんだアレ」


「痴話喧嘩とかじゃねぇの?」


「……」


近くにいた不良たちに噂される。


それもそうだ。
ゲームセンターで、男女が口喧嘩のような争いをしていたら、誰だってそっちに目を向ける。


目立つのは嫌なのに……。
しかも、不良に見られるとか。


片桐くんは聞こえていないようだったけど、私の耳にはしっかりと届いていた。


痴話喧嘩って……そんなんじゃないし。


私は、この場所から一刻も早く出たいだけ。


「最初は俺だって、この音に慣れなかったよ。
でも、今ではちっとも気にならなくなったから雨音だって大丈夫だよ」


危険なことに誘うような言葉で励まされても、1ミリも安心出来ない。