そこには神楽がいて、女の子の告白を断っていた。モテるのは知ってたけど、まさか告白現場に出くわすとは間が悪すぎる。


ますます罪悪感が……と思いつつ、今離れると音で気付かれそうで、私はその場から動けずにいた。


「わかった、付き合うのは諦めます。でも、最後に聞きたいです。
好きな子が……いるんですか?」


「……いる。けれど、この想いを相手に伝えることは、この先ないかもしれない」


「それは、どうして?」


「悪い。これ以上は、君に話すことは出来ない」


(……)


これは聞いちゃ駄目だった。だけど、神楽にも好きな人がいるんだ。


それなら私と2人きりでいるなんて、その相手にも悪いし、申し訳ない。


「そうです、よね。私、行きますね!神楽くんの想いが伝わることを願ってます」


女の子がその場から去っていくのを見た私は教室に戻ろうと足を進める。


ーーーガサッ


「!?誰だ」


「しまっ……」


葉っぱを踏む音で、案の定、気付かれてしまった。


「神楽。ごめん、聞くつもりはなかったの」


「なっ……!雨音だったのか。どうしてお前がこんな場所に?」


「お昼ごはんを食べようと思って、そしたら告白の声が……本当にごめんなさい!」


私は深く頭を下げ、神楽に謝った。


「いや、もう終わったからいい。ただ、雨音が1人だったから驚いた。
片桐と一緒だと思ってたから」


「あ、えっと……」


片桐くんの名前が出た途端、静寂な空気が流れた。というよりは、どんより暗くて重い。