「雨音。君が謝る必要なんてないよ」


「片桐くん……どうして」


近付いてきた片桐くんは、私を先輩から無理矢理引き剥がした。


「なっ……す、昴くん!?」


「俺のことが好きなのに、こういうことしちゃダメだってわからない?
それに見てたなら、わかるよね。雨音は俺の大事な人だから。……今回は見逃してあげる。でも、次はないから」


「す、すみませんでした!!!」


ペコペコと謝って、そそくさと先輩たちはその場を逃げるように去っていった。


私は、その光景を見てポカンとしてしまう。


だって、今まで見たことないような顔で怒るから。


怒鳴っているわけじゃないのに、冷たい殺気が逆に怖いというか。
普段とは違って、別人みたいだった。


「雨音、どこも怪我はしてない?」


「え?う、うん大丈夫」


「それなら良かった。……って、少し赤くなってるじゃん」


あれ?いつもの片桐くんに戻ってる。


「今はこれで我慢してくれる?でも、あとで保健室に行かなきゃダメだよ」


「このくらい大したことじゃ……って、片桐くん何してっ……」


「痛いの痛いの飛んでいけ。なにって、痛みがなくなるおまじないだけど?」


赤くなってた腕に、軽い口づけをされた。


……まただ。
胸の奥が苦しくて、すっごく熱い。