体育館裏。


先輩に取り囲まれるようにして、私は立っていた。


ゴクリと息を呑む。今から怖いことでもされるんじゃないかって、緊張と恐怖のあまり背中から冷や汗がじんわりと伝う。


「私たちさ、雨音ちゃんとお友達になりたいんだよね」


「……え?」


身構えていたから、先輩の予想外の言葉に声が出る。


「雨音ちゃんって、すっごく可愛いよね」


「いや、そんなことないです」


私はブンブンと首を振る。


「ねぇ、片桐昴くんと付き合ってるって聞いたんだけどホント?」


「実は今日の朝、校門で見ちゃってさ」


「えっと……はい」


ここでウソついても仕方ない。というか、校門で見てたとか言われたら、隠すとややこしくなるし。私は正直に話すことにした。


「……へぇ、やっぱりそうなんだ」


さっきまでの穏やかな表情とは違い、妙な殺気を感じる。


「アンタみたいなガリ勉が昴くんと釣り合うと本気で思ってんの?」


「……いっ!」


いきなり腕をガシッと掴まれたと思ったら、次の瞬間にはギリギリと力強くて、かなり痛い。


これって、怒ってるんだよね。


「別れて。今すぐ別れないっていうなら……!」


「ごめんな……」


怖い。すごく怖くて、恐怖で足がすくむ。


誰も助けに来ないって思ったら、口から謝罪の言葉がとっさに出ていて……。