「そうか。嘘じゃなくて、本当なんだな。まぁ、俺は別に彼氏ってわけじゃないから、雨音が好きで付き合ってるっていうなら止めないぞ」

「うん。ありがとう、神楽」


たしかに、私は片桐くんのことが好き。


でも、片桐くんの全部をまだ知れたわけじゃない。だから、よくわからないっていうのが正しいのかも。


っていっても、片桐くんの言葉1つでドキッとしてしまったり、イライラすることもある。


……これが、人を好きになるってことなのかな。


「雨音。俺と一緒に教室まで行こうか。それと神楽くん、ヤキモチ妬かないでね」


「うん、そうだね」


「妬く……わけないだろ」


「君の本心は丸見えなんだよね。雨音には気付かれてないみたいだけど、俺には君の気持ちが痛いほど伝わってくるよ」


すれ違う寸前、片桐くんが神楽の耳元でボソボソと小声で言っていた。けど私には、その声が小さすぎて聞こえなかった。



午前の授業が終わり、昼休みになった。


私は、屋上でお昼ごはんを食べようと思って、席を立つ。


「九条雨音ちゃん、少し話があるんだけど良い?」


「私、ですか?」


教室の入り口に立っている複数の女子。


ネクタイの色を見ると3年の先輩だった。


(嫌な予感がする……)


私はお弁当箱を机に置いたまま、先輩たちの方へ向かう。