羨ましいって、そもそもの原因は片桐くん……いや、私のせいかもしれない。


1人でいるところを見られなかったら、こんなことにはならなかった。だけど、それがあったからこそ、片桐くんは幼なじみだって打ち明けてくれたわけだし。


嬉しいような、嬉しくないような……。
どちらの感情が正しいのかわからず、私の心はフワフワしている。


もう、自分で言っててワケがわからない。


「神楽くん。君には紹介が遅れたけど、雨音は昨日から俺の恋人になったんだ」


頭の中であれこれ考えていると、グイッと肩を引き寄せられた。


片桐くん……今、なんて言ったの?


「なっ……!」


神楽は嘘だろ、と、いった表情で口をあんぐりと開けていた。


「九条さんが片桐と付き合うとか。俺、狙ってたのになぁ」

「いいなぁ~。私も片桐くんの彼女になりたい!」


校門や下駄箱付近にいた生徒たちみんなが、片桐くんの発言にザワついている。


私はなにか重要なことを言われたけど、ほぼ半分以上が上の空だった。


弁解の言葉を考えていたら、いつの間にか余計なことばっかりが頭の中を駆け巡っていて。


「雨音。片桐と付き合ってるって本当なのか?」


「……本当だよ」


神楽、そんな目で私を見ないで。


本当はフリなの。でも、それを言うと私が1人でいたことも、片桐くんが実は私の幼なじみで初恋の人だってことも話さないといけなくなるし。


それに、片桐くんに弱みを握られてる以上、下手なことは言えない。