私は寝不足で目を開けるのがやっとだというのに。


片桐くんは朝から元気がよろしいようで。 というか、やっぱりチャラい。


なんで、私はこんな人を好きになったんだろう。って、昔は可愛くて素直だったし。


「雨音。準備が出来たんなら、早く行きなさい。昴くんをいつまでも待たせたらいけないもの」


「あー……うん、わかってる」


どうしよう。お母さんまで、片桐くんに落とされちゃってる。


ファンは多いと思っていたけれど、まさか年上までとは。


……片桐くん、恐るべし。


「片桐くん、どうしてわざわざ迎えに来たの?」


家を出てから数分、片桐くんと2人きりになった私は思ったことを聞いてみた。


「おはよう、雨音。んー、どうしてって言われても、恋人を迎えに来るのって当然じゃないの?」


ニコニコと笑顔で返された。


そのセリフは、今までの彼女にも言ってきたんだよね。


聞きたかったけど、聞けなかった。


昨日といい、今日といい、どうして私の心はこんなにもモヤモヤするの?


胸の奥が、バラのトゲで刺されたみたいにチクッと痛い。