翌日。


昨日はいろんなことがありすぎて、結局寝たのは朝方だった。


そのせいで目の下のクマはひどいし、寝癖もなかなか、なおらない。


三つ編みをしようにしても、眠気が襲ってきてまともに結ぶことができない。


洗面台の鏡の前で、ボーッとしながら髪を結んでいると、


「雨音、お迎えが来てるわよ」


「……へ?」


お母さんから声をかけられ、口に加えていた髪ゴムを落としてしまった。


こんな朝から迎えって誰?


神楽は、たしかに過保護だけど、わざわざ迎えに来るなんてことはしない。


一緒に登校するにしても、駅あたりで待ち合わせしたりする。


心当たりがない。……いや、もしかして、もしかするかもしれない。


「相変わらずお綺麗ですね、静香さん」


「やだわ、もうそんな歳でもないわよ。そういう昴くんも大きくなったわね」


「……」


玄関で声が聞こえると思ったら、やっぱり……。


私のお母さんを爽やかスマイルで口説いていたのは、昨日から恋人になった片桐昴だった。


まぁ、恋人っていっても仮(フリ)だし。でも、私の初恋の相手でもあるんだよね……。