横断歩道に立ち止まり、空を見上げる。どこまでも突き抜けるような青色ではなく、嫌な予感がする鈍色がただ広がるばかりだ。

「今日は、Lの日だね」

傘を片手に、彼女がいつも通り私の右に駆け寄る、左手首にケースがひび割れた白い腕時計をつけて。そして煌めくような笑顔で「おはよ、雨だからLの日」と言った。
信号が切り替わり、また彼女が先に歩き出す。彼女の髪に珍しく寝癖がついていることに気がついた。直してあげようと手を伸ばそうとして

「寝癖ついてるよ」

我に返った。