至近距離で見つめあって、思慮の深くまで探り合う。しかし瞼を閉じてしまえば、それでお終い。だからこそ唇を触れ合わせる。それが当然のことだと思った。
ゆっくりと、それでいて逃げられない速度で何度も唇を塞がれる。触れ合わせるだけの稚拙なものだが、角度を変えてもう一度、と求めるままに縋る、その単純な愛情が愛おしくてそれを受け入れ続けた。
ピントの合わないSの瞼を見つめていると、ふ、と顔を離される。涙でくしゃくしゃになったSの顔はそれでも綺麗で、もう一度胸に寄せた。

「……S……好き、好き……だよ……」

「私も……好き、ずっと……っ」












好きになった人が、同性だっただけ。

ただそれだけなのに。

認める認めない、とかそんなのもおかしい。

ただの、恋愛。

同性愛なんて言葉はなくなっちゃえばいいのに。

例外扱いしないでくれ。

なんてこと、大きな声で言えるほど私たちは強くない。ただの女子高校生だから。



――だから、私たちは明日からまた“友だち”だ。



異常を省くこの世界で、普通を演じ続ける。
Sは彼氏を作るし、私もそれを咎めない。
普通であるため、弾かれないように、

友だちのフリ――。