実家に帰ればわかるのだけれど、自分が何も作らなくても食べるものがでてくるという環境は素晴らしい。
自堕落な生活になってしまう。
恐るべし、実家。

そしてダラダラと過ごしているうちに大晦日がやって来る。
怜たちの年末ライブは外れた。今日は泣く泣く自宅待機だ。

基本的に私の帰省中は怜から連絡の連絡はない。
今回も同様で、私は連絡が取れる状態にありながら、こたつでぬくぬくとテレビの中の彼が活躍しているのを見ているのだった。

「ねーちゃん、勉強はいいのかよ」
「冬休みぐらい休ませて、休むために頑張ったんだから」
「ったく、大学生は楽だよなー」
「圭斗も今年頑張ればこうなれるって」

今年大学受験を控える弟――圭斗が単語帳を片手にこたつに入る。

「お、怜じゃん」
「知ってるの?」
「最近買った雑誌のモデルやってた、かっけーよな。ねーちゃんと同い年だろ」

やけに詳しい。それに雑誌って、多分ファンション誌だ。
色気づいちゃって、まあ。

「いいよなー、俺も金髪が似合う男になりてー」
「やめな、圭斗は顔立ち地味なんだから絶対浮く」
「わーってるよ。やれても茶髪かな」

髪型マッシュ気味の量産男子大学生になりそうな予感をひしひしと感じつつ、視線をテレビに戻す。
彼もぶつぶつと英単語を唱え始めた。