ありがたくプレゼントを受け取ったのちに今日はお開きになる。
支払いは私がお手洗いのうちに詩壇くんが済ませていたようで、彼は一円も受け取ってくれなかった。
スマートさが完全にできる男のそれで、そんな能力を激安レストランで見せつけられたことに動揺を隠せない。

「なんでそんなにしてくれるの、悪いよ」
「別に悪くない。お前が俺たちに使った分を俺が今返しただけだ」
「それなら多分おつりがくるだろうけど。……いや、私は詩壇くんたちが自分の好きなように生きてもらうためにお金使ってるんだからね」
「だったら俺は今十分自分のしたいようにお金を使ったぞ。だから気にするな」
「うーん」

彼がいいならいいのかもしれないけれど、いまいち納得できない。
その代わりといってはなんだが、今日の満足度について尋ねてみた。

「楽しかった?」
「ああ」
「私も!」

軽く走り出したくなるぐらいには。
そんな私を見て詩壇くんは苦笑いする。

「無邪気だな」
「無邪気で可愛いでしょ」
「自惚れもほどほどにしておけ」
「アイドルがチクチク言葉使ってる~」
「言われた方にも責任がある」

肌寒い秋の日、人通りはまばら。街路樹は控えめにイルミネーションを纏っている。

「少し歩かないか?」
「いいよ」

意外なお誘いだったけれど、腹ごなしにはちょうどいい。


「今日はありがとな。付き合ってくれて」
「そんなのこちらこそだよ。いいものももらっちゃったしさ」
「あれは普段のお礼だから、気にしなくていい」
「普段の行いがよくてよかったー! 次のライブもよろしくね!」
「それはお前の今後次第だ」
「ぐ」

自分にも他人にも厳しく、時には友人に甘く、ファンに平等。できた人だ。

「今日のこと、怜には言ったのか?」
「え、特に言ってないよ。どうして?」
「いや……特に理由はない」
「変なの」

怜はいつ帰ってくるかわからないから、予定を言うことは少ない。
怜も特に触れてくることもない。私たちは意外とドライなのかも。

「あのさ」
「ん? どうしたの」

急に立ち止まるから、思わず振り返る。
いつになく真剣な顔をしていた。

「お前、俺のこと好きか?」
「えっ?」

唐突かつ、それはそれは大きな爆弾だった。