台所からの物音で目が覚めた。

休日は大体お昼過ぎまでは爆睡しているのだが、目が覚めてしまったものは仕方がない。

音のする方に目をやると、少し長めの金髪をハーフアップに結っている男性……男性!?

頭が回っていない私は寝返りを打ちながら状況把握をする。

えっと、昨日拾った、男性だよね。
そうだ、で、アイドルの有栖怜に似てる。

うん。OK。

なんとか理解したところでいい匂いのするものが運ばれてきた。


「おい、起きろ」
「ぎゃあっ」


突然掛け布団を剥がされて跳ね起きる。


「あァ? なんだお前、起きてたのかよ」
「いや、起きてなかった……」
「まあいい、食え。作った」


彼の指さす方向には、湯気が立ち上るご飯とお味噌汁。
ご飯には一人暮らしの前から私が大好きなたまごとのりのふりかけがかかっている。

お腹も空いていたので素直に手を合わせた。

いただきます。


「美味しい……!」

炊き立てごはんと程よい塩加減のお味噌汁は、やっぱり和食はいいなあと思わせる。


素朴ながらもこんなに美味しいご飯を食べたのは久々だ。


朝ごはんを堪能する私の横で、彼は胸を張り腕を組みながら得意げに言う。


「ま、オレ様が作ったんだから、美味いのは当たり前だ。
お前はそれだけな、あとはオレ様が全部食う」
「はい?」


昨日、熱が出ているからだろうと思いスルーした、ありえない一人称が聞こえた気がする。

あと、とんでもなく自意識過剰な発言だった気がする。


いや、聞き間違いかもしれない。

もしくは、まだ全回復していないのかもしれない。


熱がある人に朝ごはん作らせるなんて、悪いことしちゃったなと思いつつ、調子を尋ねた。


「あの、熱は?」
「ンなもん下がったに決まってんだろ、バーカ」
「……」


く、口悪……っ。

あまりにも口が悪すぎて絶句した。

私のお米を貪っている彼を見ながら大反省会が始まる。


なんで助けちゃったんだろうこんな人。


というか、馬鹿と罵る前に看病した私に対するお礼とかないの?


‥‥‥まあ、仕方がない。この人を助けたのは私のエゴだから。