「ちょっと待って、詩壇くん、彼女いたことあるの……?」
「はあ!? なんでそうなるんだよ」
「だってこのブランド! 女子ウケがいい!」
「そ、そうなのか。」
まあいろいろ調べたしな、そんなつぶやきを聞きながら、手の中できらきらと輝くプレゼントを眺めた。
あの有名デパートコスメブランドのミラー。しかも手鏡なので持ち運べる。
誕生日プレゼントにこんなものを貰ってしまったら、しかも推しからなんて、恋に落ちてしまうじゃないか。
「恋に落ちるよ……」
「声でてるぞ」
「ありがとうの意……」
まさか、こんなプレゼントがもらえるなんて思ってもなかった。今日ここにふたりで来ていることが既に驚くべきことなのに。
「いいの?ありがたく貰っちゃうからね」
「ああ。お前のために買ったものだ」
「ていうか引き取ってどうするつもりだったのよ」
「マネージャーにあげる」
「なるほど」
私のために買ったもの。ぐっときそうな気持ちを抑える。
デパコスのコーナーに行っていたら面白かったけど、多分通販なんだろうな。
ちょっと残念。
「これは詩壇くんの誕生日も相当気合入れないとだね!」
「怜のとき以上のものを期待してる」
「闘争心に巻き込まないで」
手塚くんはたまに子供っぽい。
そこが推せるんだよなあ、兎束壇……。