にこやかに笑う茶川さんの言葉に、私は思わず飲んでいたお茶を噴き出した。


「汚いな!」


手塚くんは怒号を飛ばしながらティッシュをとろうとして缶チューハイを倒し、
怜は枝豆を喉に詰まらせ派手に咳き込んでいる。


「さ、茶川さん、困りますよ‥…! ここ賃貸ですし!」
「はは、ごめんね。みんな若いなあ」


余裕のある大人にわけのわからないいちゃもんをつけてしまった。
酔っ払いたちも動揺しているのか酒を煽り続ける。


「詩壇、そのへんにしなよ。あんまりお酒強くないんだから」
「飲めます! 少なくとも怜なんかよりは!」
「ああ!? んだと!?」
「ちょっと! こぼしたの早く拭いてよ!」


アルコールでポンコツ化してしまった手塚くんは、いつもに増して眉間にシワが寄っているものの雰囲気は柔らかい。


「よしお前ら! 成人したオレ様の最高に痺れるパフォーマンスを見せてやるぜ!」
「いいけどそんな大声出さないで!」
「じゃあ俺はこれから時森にソロ曲を捧げる」
「えっっっいいの!? ……じゃなくて! 手塚くんも落ち着いて!」
「ふふ、みんなと飲むお酒はおいしいね」
「笑ってないでどうにかしてください茶川さん!」


その後酔っ払いたちのお世話は深夜まで続いた。

途中目があった怜が優しく笑うから、つい、目を逸らしてしまう。


『プロポーズみたいだね』


そんなわけない。そうであってもなくても、私はもう怜のおかげで十分幸せだった。