「ハッピ~~バ~スデ~~~! 怜!」
パン、と鳴らされるクラッカー、火薬の焼けたにおいがあたりに漂う。
「……なんでいんだ、アキ、詩壇」
「いやー時森さんに誘われちゃって。
怜がいつもお世話になってるし、来ないわけにはいかないかなって」
「言っておくが、俺は五回は断ったぞ。時森はしつこすぎる」
「大勢いた方が楽しいでしょ、さ、入った入った!」
昼間のうちに飾り付けをした部屋、私なりに頑張って作ったご飯……じゃ怜がかわいそうだったので、チキンのファミリーパックを購入しておいた。
あとは映画館に向かう途中で手塚くんに鍵を渡しておけば、二人が私たちより早く家に入れる。
「酒はいろいろ買っておいたから。お金はアキが出してくれる」
「え、そんな」
「当然だよ。それにまだ飲めないんでしょ?そんな子に払わせるような真似はしないさ」
「茶川さん……」
あれ、なんで私が成人してないって知っているんだろうか。ま、いいや、実際そうだし。
綺麗なウインクに撃ち抜かれそうになりながら、急いで仕上げにかかる。あとは簡単なサラダなど……。
「ええっなにこれ!?美味しそうな料理が出来上がっていますが!?」
「ただのボロネーゼだろ。キッチン使ったぞ」
「手塚くん料理うまっ」
ふん、と鼻を鳴らす怜はシャワールームに直行。
「すぐ出る」
あれ、なんか不機嫌?
「私なんかしちゃったかな……」
「時森さんはなんも悪くないよ。気にしないで」
「盛り付けするぞ」
「はーい」
本当にすぐ出てきた怜とテーブルを囲む。
いつも通りの金髪がまぶしい。やっぱり怜はこうでなくては。
「あ、時森どうだった? 眼鏡」
「すぐ気づいたぜ。オレ様を見て一言目が誰、二言目が詩壇の眼鏡」
「その話はいいから!乾杯するよ!」
茶川さんはビール、二人は度数低めの缶チューハイ、私はサイダー。
「オレ様の大事な誕生日を祝して! 乾杯!!」
夜の長そうな宴が始まった。