「今日は怜、不良の役なんでしょ?」
「ああ」
「ぴったりだね」
「褒め言葉か?」
「もちろんだよ」


シアターはほぼ満席で、しかも女の子ばかり。これはほとんど全部ニューアレのファンに違いない。
後ろの端の席を取ったのは間違いなかった。
近くにいるのもおそらく相手の女優さん目当ての男子高生集団なのも非常にツイている。


「ま、せいぜいオレ様の熱演に号泣するこったな。
メイク崩れとか気にせずガンガン泣けよ!」
「さあ、どうでしょうかね」


おすまし顔で言ったが、終演後、私はこの言葉に感謝することになった。


「怜~~~~~~~すごく、すごく、よかった……」
「ほんとにな、この漫画、最高だろ……」


一番後ろの席で大泣きする男女をみて、高校生たちが「うける」と言いながら階段を降りていく。
いや、全くうけない。これを観てすぐに「うける」なんて言えるのは人間ではない。

映画館をでても私と彼の鼻水は収まらなかった。


「最初の不良くんの不良具合はすごいよ、それなのに、あんなツンデレは反則」
「なんであいつらがああなんなきゃいけないんだろうな……」


主演をしている人と話しているとは思えない感想の薄さではあったが。