怜の誕生日、なにしようかなあ。


ひとりきりの夕ご飯を終え、
雑誌を片手にベッドで休憩。


以前手塚くんに呼び出され事務所に伺った際、今後なにかあったら早急に俺に連絡をと厳重注意を受けた。
それを聞いた怜に「じゃあ沙良になんかあったときは?」と尋ねられたので、母親の電話番号と実家の番号を渡したのだが。


「怜の両親、いないのかなあ……」


緊急連絡先が手塚くんなのは不思議だし、
そもそもおうちでなにかあったから住めなくなって、結果私のようなお人好しの家に上がり込んでいるんだろうけれど。

申し訳なさはありつつ「有栖怜 家族構成」で調べてみても、手がかりはなかった。
代わりに誕生日には特に思い出がないと答えるインタビューを見つけ、そこはかとなく気まずい。


昨年住み始めたときにはもう怜の誕生日は終わっていたからな。
今年は人生で一番楽しい誕生日にしてやろう。


開いた手帳に大きな赤丸をつけ、『怜生誕祭!!』と書き込んでいると、ドアの開く音がした。


慌ててページをめくりながら「おかえりー」と声をかける。
するとただいまも言わずに満面の笑みを浮かべた怜が、勢いよく居間に駆け込んできた。