「とにかく、俺のことは手塚、で。わかった?」
「わかったわかった。任せて」


他の人には自分の正体をさらす気はないらしい。

大きく頷いた私を見て、兎束……否、手塚くんは不安げな溜息をついた。

私も自分が心配になった。


「手塚くんさ、どうして編入してきたの?」
「俺の大学の情報が春休みの間に流出して、急いで大学変えた。好きな教授のゼミ入る予定だったのに」

「それは災難だったね」

「でも今回ここに入ったのは俺とマネージャーたちとお前しか知らないことだから。
流出したら誰が真っ先に疑われるか、わかるよな」

「言いふらさないよ!
怜の話だって誰も知らないでしょ。
第一それならなんで私に正体明かしたのよ」

「一人くらいは大学に知り合いがいた方がやりやすい」


もっともなことを述べて、彼は「ごちそうさまでした」と手を合わせた。


「じゃあ俺、仕事だから」


私の食べ終わりを待つことなく、さっさと学食を出ていく手塚くん。


ニューアレ青担当、兎束壇。

本名は手塚詩壇くん。

クールな完璧主義者。


そして、本当に不愛想。