「東京は桜咲くの早いよねえ。去年は引っ越して来たら散りかけだったもん。今度お花見しようよ」

「あー‥‥‥オレ様は忙しいから無理。一人でしてろ」
「なにそれさみし」


いいもん友達と行くし。
私だって友達いないわけじゃないんだから。


なんて、そこまではっきり断られると思っていなかったから、少しだけ驚いたけれど。



コンビニで大量にアイスやお菓子を迫られた。

しぶしぶ買っても「今日はオレ様のお祝いだろ」とちっとも分けてくれない。


「キャラメル一個ならやる」
「……どうも」

キャラメルのほろ苦い甘さが私の財布の痛みをそっと慰めてくれた。


全く、彼は人に優しくしていないので、きっとそのうち罰が当たるに違いない。


「モデル決まったこと漏らすなよ。ユニットの奴らにすらまだ言うなって言われてる」
「えっそうなの!?」


そんなの私に言ってよかったの!?

いや、別に誰にも言わないけれど。


「なんで教えてくれたの?」


ふと、疑問が口に出てしまって。


「別に‥‥‥」


怜はそっぽを向いた。

理由なんてないか。結局誰かに自慢したかったんだろうな。



いいよ、都合よく使われて、喜んで、おだててあげるから。



「__なんか美味いもん食わせてくれるかなって思っただけだし」


言葉が続いたことに驚いた。


そうは言いつつ、そっぽ向いたままなのはなぜだろう。



そこまで聞くのはきっと野暮だ。



「じゃあ今度また大きい仕事決まったら、今度は私が手作りケーキを振舞いましょう」
「げ。モチベなくなるからヤメロ」
「なんだって!?」


あーだこーだ言いながらも、早くも私は作るケーキの種類を考え始めた。