私、時森沙良が上京して初めての梅雨は、蒸し暑い上に例年を上回る降水量であった。
GWから始めたアルバイトにはまだ慣れない。
今日も一人反省会の帰り道。
運悪く大雨。
「や、やばいっ……」
小雨だったので傘もささず走っていたけれど、ゲリラ豪雨的なそれに変わったのに耐えきれず、
しかし住宅街故雨宿りができそうな場所もなく、急いで橋の下まで移動した。
「ひどい雨……」
呟きながらリュックから折りたたみ傘とタオルを出し、軽く体を拭く。
すると、どこからともなく動物の鳴き声が聞こえた。
猫だ。
猫はこちらを一瞥してから闇の中に消えていく__
と思ったら、その方向に倒れている人が見えた。全身から血の気が引く。
「大丈夫ですか!」
急いで駆け寄り呼吸を確認する。
荒いがひとまず生存確認は完了。
暗闇に金髪が映えている。
髪は長めだけれど、おそらく男性だ。
出ていた腕に手を当ててみるとひどく熱い。
風邪だろうか。