誓くん、こと、堂前 誓一朗(どうまえ せいいちろう)さんは、私の上司。

1年前、私が新入社員として配属された営業5課の係長……だった。

右も左も分からない私を丁寧に指導してくれて、困った時には、さりげなくサポートしてくれて、失敗した時には、ちゃんとフォローしてくれた。

そんな誓くんに惹かれないわけがない。

私は、配属されて3ヶ月目の8月、誓くんに思いを告げた。

けれど……

青山(あおやま)は、まだ22歳だろ。俺は、32歳だぞ?
 どう考えても釣り合いが取れないだろ」

そんなの、どうしようもないじゃん。
どんなに努力したって、年齢差は縮まらないんだから。
 

私は失恋の傷を抱えたまま、誓くんの下で働く。


あ、ちなみに、青山っていうのは、私、青山 七星(あおやま ななせ)のこと。


だけど、毎日一緒にいるのに、諦められるはずがない。

9月、私は、再び告白する。

けれど……

「俺は、上司だぞ? 部下に手を出したら、セクハラで訴えられるだろ」

と、笑ってごまかされる。

そんなの、どうしようもないじゃん!
私に10年分のキャリアを追いついて、同じ役職になれって言ってるの?

私は、また、努力ではどうしようもない理由で振られた。


なのに……

誓くんは、ずっと優しかった。

鬱陶しがったり、邪魔にしたりすることなく、変わらず、失敗だらけの私を陰から支えてくれる。


そして、10月。

諦めきれない私が、3回目の告白をした時、誓くんは、ようやく、

「負けたよ」

というひと言で、私を受け入れてくれた。

それから、半年、周りには内緒でこっそり付き合ってきた。