『俺、潜るの得意なんだぞ。美緒、見てろ』

『哲也、少し休もうよ。徹夜だったし、睡眠不足なんだから。少し眠ったらまた入ろう?』

『なんで? こんなに楽しいじゃん、美緒も潜ろう』

浮き輪で浮かんでいる私を抱き上げ、周りの様子を見て秒殺のキスをする。

『そんなんじゃ誤魔化されませんよ』

『えへへ』

心配する私を余所に、哲也は海に潜った。

長い時間潜っていられると自慢していた哲也だったが、浮き上がる気配のないことに、私は怖くなって、震えた。

『みんな!! 哲也が潜ったまま浮かんでこないの!! 探して!!』

私の叫び声でみんなが一斉に海に潜った。

私は泳ぎが得意じゃない。

そんな私が潜って二次災害にでもなったら迷惑がかかる。

それでも使っている浮き輪を手に何とか、顔を海につけた。

意外と濁っていない海は、視界も良好で、魚や岩も見えた。

だが、息を止めていられず、すぐに顔をあげた。

そんなとき、ライフセーバーが事態を察知して、救助に来てくれが、哲也は海中で息をしていなかった所を発見された。

『心臓発作ですね』

海から引き揚げられたとき、哲也は既に心臓が止まり、息をしていなかった。

人工呼吸と心臓マッサージが施され、救急車に乗せられた。

運ばれた病院で救命医にそう告げられた。