哲也と付き合っている時、遊園地、映画館、テーマパーク、博物館、美術館に動物園。数えきれないほどいろいろな場所で哲也とデートをした。

大学の仲間とも遊びに行った。その中でも、二度と来たくなかった場所に私は来た。

哲也を奪った海。海が画像として目に入り込んだだけで、吐き気が襲ったり、気を失ったりして情緒不安定な時期があった。

海には大学の仲間と遊びに来ていた。

大人数で最後の夏を楽しもうと哲也が企画したものだった。

みんなでいれば怖くないとでもいうように、宿泊場所を決めず、海水浴場の駐車場か道の駅で車中泊だとはしゃいでいた。

この日の為のお金を稼ごうと、連日バイトのシフトを入れ頑張っていた。

ゼミの課題をおろそかにしていた哲也は、そのつけが回り、海に行く前日までレポートをしあげていた。それに加え、「旅のしおり」と作ると言い出して、自らの睡眠を削っていた。

この年の夏も、今年の夏の様に、記録的な猛暑を更新して、哲也の身体にダメージを与えていた。

『しおりなんていいよ、少し休まなくちゃだめよ』

『見ろよ、これ。最高の出来だと思わない？』

はちきれんばかりの笑顔で私に作成したしおりを見せた。

それは確かに素晴らしい出来だった。

『凄い、頑張ったね。みんなが喜ぶわよ』

『そうだよね』

『よく頑張りました』

褒められてはしゃぐ哲也に、私は思わずキスをした。

出発の日。レンタカーや自分の車を持ち寄り、海に向かった。

行の車中は大合唱やクイズで盛り上がり、哲也は睡眠不足も感じさせない程、はしゃいで場を盛り上げていた。

浜辺でゲームやビーチバレー、スイカ割を楽しみ、海にも入った。体がふやけてしまうほど、海に入っていた。