「あった……」

エアコンを入れ、玄関にいる一ノ瀬さんの元に走って行き、横になっていた一ノ瀬さんを起こした。

「つかまって」

自分の肩に腕を回して、腰を支える。身体が熱い。熱はさらにあがっているに違いない。
寝室に連れて行き、ベッドに倒れ込むように横になる。

「許可なく、いろいろと開けますからね。あとで怒らないでくださいよ」

有無を言わせず言い、ベッド脇にあったチェストを開け、Tシャツを探す。

「あと、パジャマのズボン」

ベッドの下に落ちていたパジャマを見つける。

「すみません」

ワイシャツのボタンを外して、ワイシャツを脱がせる。一瞬、撮影の時を思い出す。

「バカ、そんなことを思い出してる場合じゃないでしょう」

全く私は何を考えているのだろうか。

一ノ瀬さんを抱きかかえるようにして、腕からワイシャツを抜いて、頭からTシャツをかぶせる。

一ノ瀬さんは熱による発汗だけど、私は、身体を使っての汗だ。

噴き出すような汗にくらくらしそうになる。

「はい、横になって。一ノ瀬さん、さすがにズボンは無理なんで、履き替えてもらえます? 一ノ瀬さん!」

「う……ん」

半分意識が飛んでいるのか、はっきりしない返事に心配になる。

ズボンは任せて、空けた窓を閉め、今度はキッチンに行き、冷蔵庫を開ける。


「何にも入ってない」

私も料理が苦手で、食材を入れいないほうだけど、一ノ瀬さんはさらに酷い。

かろうじて、ミネラルウォーターがあったので、それとグラスを持ってまた寝室へ。

一ノ瀬さんは着替えを済ませていて、ベッドに身体を起こして座っていた。