「よし、亮、もっと彼女の肩に顔を埋めるように」

本当に? 嘘であって欲しいと願うポーズばかりだ。

私は顔を一ノ瀬さんの方に向けているから、顔を近づけられると、目の前に一ノ瀬さんの顔が来ることになる。

「緊張は解けたか?」

「まさかです」

お願い、目の前に顔があるのに、しゃべらないで。強がって見せたいけれど、そんな余裕はない。

「顔を俺の胸に付けないように頑張ってるけど、身体が耐えきれないって震えてるぞ」

そう、その通り。

何とか肌に触れないように背筋、腹筋をふるに使い頑張っているのだが、今流行の筋トレは私に無縁の代物。

ブヨブヨの身体には保っていられる時間に制限がある。

もう限界なのだ。

「意地悪です。ダイエット中ですから、今に見ててください。スマートになりますから」

その言葉と同時に、私は力尽き、一ノ瀬さんの胸に体重をかけた。

「桜庭は今のままでいい。言ったはずだぞ?」

「……」

冗談には、冗談で返して欲しいのに、どうしてそんなことを言うのだろう。

私を困らせるのが一ノ瀬さんだ。

一ノ瀬さんは私の緊張をほぐしてくれようと、色々と話しかけてくれていた。

でもしっかりとポーズはとっていて、唐沢さんの一ノ瀬さんを褒めるような声が聞こえていた。

「いいぞ、亮。感は鈍ってないな」

唐沢さんも乗って来たのか、要求が激しくなる。

「彼女の肩ひもを指にかけて、少しずらす。紐で遊ぶように」

それを聞いた私は、驚いた。