「女は度胸よ、そのままいけ!!」

メイクとスタイリストに押し切られ、泣く泣く恥ずかしい姿になった。

控室を出てしまえばもう戻ることは出来ない。ドアノブに手が掛けられずに立ち尽くす。

でもこんなことをしていたってどうにもならない。

ドアの前で、ヨシと小さく気合を入れてドアを開けると、ドアの前には一ノ瀬さんが立っていた。

言葉がない。

そこには、私の知っている一ノ瀬さんはいなかった。

整えられている髪は洗いざらしの状態で、もちろんブローはしている。

それに、顔は少しお化粧、テレビに出る芸能人ならだれでもしているドーランを塗っていた。

眉毛も凛々しくかいている。私と同じく、バスローブを着ているけど、軽く合わせただけのバスローブから見える肌が、私をさらに恥ずかしくさせた。

ドアを開けても一歩が踏み出せないでいた私に、一ノ瀬さんが近寄って、私の手を握った。

「俺が付いてる。気持ちを入れて行こう」

不安な私は、頷くしか出来なかった。

一ノ瀬さんは私の手を繋ぎ直し、スタジオへと向かった。

スタジオに入ると、スポットライトの様にセットのベッドを照らしていた。

「一ノ瀬ちゃん」

スタジオ入りした私達を見つけ、声を掛けたのは演出家の室井さん。人払いをしてくれると言っていたが、演出家はいなければならないだろう。

セットを見た途端に、私は足がすくんでしまい、一ノ瀬さんが引く手を引き戻してしまった。