覚悟を決めてやろうとしたけど、やっぱり一ノ瀬さんがネックだ。

私は、告白されているのだ。私に想いがある人と、あんなポーズ。

自分の心の中で、羞恥心と仕事を天秤にかけてみる。

やっぱり、一ノ瀬さんの仕事を奪いたくない。

この日に間に合うように、身体を作ってきた。その一ノ瀬さんの思いに答えたい。

私のわがままでダメにしてはいけない。私は覚悟を決めた。

「お待たせしました」

ビクビクしながらスタジオに戻る。真っ先に駆け寄ってくれたのは、一ノ瀬さんだった。

「あの……やります」

「……ありがとう」

私の答えは分かっていたのか、既にスタイリストとメイクは、控室で支度を始めていた。

隣の控室では一ノ瀬さんが支度をしている。どんな風になってくるのだろう。

「桜庭ちゃん、大丈夫よ、一ノ瀬さんに任せておけば」

「そうよ、それに、あの一ノ瀬さんとペアが組めるなんて、他のモデル達から妬まれるわよ」

「そんなぁ」

「現役時代のことは知らないけど、一ノ瀬さんがやるって分かると、こぞって女のモデルは隣を争ったって言うわよ。本意じゃないかもしれないけど、ラッキーって思うくらいに気楽に考えて」

「……そこまで思えないですよ」

「グダグダ言ってないで綺麗にしてあげるから、はい、仕度!」

バスタオルを渡され、シャワーを浴びるように言われる。

シャワーを浴び終わると、すぐにバスローブを羽織り、下着は着けないようにと言われた。

「下着の跡が出るのはマズいのよ」

「なるほど」

バスローブのままで髪のブローが始まる。

私の髪の長さは、ちょうど肩甲骨のあたり。もういいよと言いたくなるほど、ブローに時間をかける。

メイクはナチュラルに仕上げ、本当に素顔みたいでいやだ。