準備が終わって暫くすると、ぞくぞくと会議室に講習を受けにタレントがやって来た。
「しーちゃん」
手招きをして、しーちゃんを呼ぶ。忙しい時にこれくらいのご褒美はあってもいい。
「やっぱりカッコいいね」
「しーちゃんはどの顔が好き?」
「やっぱり、背が高いのはいいですね」
こそこそ話は尽きることがない。まるで生きている人間をみる美術館のようだ。
「こら、始めるぞ」
ド素人の様にきゃぴきゃぴしてしーちゃんとはしゃいでいた私の頭を、一ノ瀬さんが丸めた資料でこつんと叩いた。
「すみませ~ん」
しーちゃんはデスクに戻り、私は後方に待機して講習を聞く。
「おはよう」
『おはようございます』
会議室には、シャインプロダクションと契約しているタレントが、総勢20人顔を揃えていた。
「みんなも分かっていると思うが、芸能人として発信する発言の影響力は大きく、何かと世間を賑わせている。何気ない一言が、行動が、タレント生命を脅かす結果にもなることを、忘れないでもらいたい」
冒頭からの厳しい要求に、一同は黙る。
「契約書を細かに読み上げて、同意をするのには、意味がある。
分厚く面倒だと思うかもしれないが、契約書に書いてある通り、契約違反は即、解除をする。例えそれが、どんなに売れているタレントでもだ。心するように」
ハイという返事が聞こえたが、緊張感漂う会議室に圧倒されたのか、返事は小さい。
「では、一ページ目から開いて。コンプライアンスについて説明します」
それぞれにオーラを出しているタレントの中でも、一ノ瀬さんは引けを取らない。
会議室の一番後ろに座り、一緒に講習を聞く。
毎回つまらない顔で聞いて来たが、正面に立って話をしている一ノ瀬さんは、一生懸命に説明をしている。
今まで「面倒くさい」と思ってきたことを反省しなくては。
私は、最後尾の出口ドア付近に椅子を出して、座っている。
遅れてくる所属タレントや、電話の取次ぎなどの為だ。
資料を作る時に読み込んでしまっていて、ページを捲る気にもならない。
しかし、一ノ瀬さんは立ちっぱなしで話をしているのだから、つまらない顔などしてはダメだ。
「しーちゃん」
手招きをして、しーちゃんを呼ぶ。忙しい時にこれくらいのご褒美はあってもいい。
「やっぱりカッコいいね」
「しーちゃんはどの顔が好き?」
「やっぱり、背が高いのはいいですね」
こそこそ話は尽きることがない。まるで生きている人間をみる美術館のようだ。
「こら、始めるぞ」
ド素人の様にきゃぴきゃぴしてしーちゃんとはしゃいでいた私の頭を、一ノ瀬さんが丸めた資料でこつんと叩いた。
「すみませ~ん」
しーちゃんはデスクに戻り、私は後方に待機して講習を聞く。
「おはよう」
『おはようございます』
会議室には、シャインプロダクションと契約しているタレントが、総勢20人顔を揃えていた。
「みんなも分かっていると思うが、芸能人として発信する発言の影響力は大きく、何かと世間を賑わせている。何気ない一言が、行動が、タレント生命を脅かす結果にもなることを、忘れないでもらいたい」
冒頭からの厳しい要求に、一同は黙る。
「契約書を細かに読み上げて、同意をするのには、意味がある。
分厚く面倒だと思うかもしれないが、契約書に書いてある通り、契約違反は即、解除をする。例えそれが、どんなに売れているタレントでもだ。心するように」
ハイという返事が聞こえたが、緊張感漂う会議室に圧倒されたのか、返事は小さい。
「では、一ページ目から開いて。コンプライアンスについて説明します」
それぞれにオーラを出しているタレントの中でも、一ノ瀬さんは引けを取らない。
会議室の一番後ろに座り、一緒に講習を聞く。
毎回つまらない顔で聞いて来たが、正面に立って話をしている一ノ瀬さんは、一生懸命に説明をしている。
今まで「面倒くさい」と思ってきたことを反省しなくては。
私は、最後尾の出口ドア付近に椅子を出して、座っている。
遅れてくる所属タレントや、電話の取次ぎなどの為だ。
資料を作る時に読み込んでしまっていて、ページを捲る気にもならない。
しかし、一ノ瀬さんは立ちっぱなしで話をしているのだから、つまらない顔などしてはダメだ。