俺の一番嫌いな業務は講習だ。

講師をしながら眠くなるほど、つまらないのだ。講師の俺が感じているのだから、講習を受けている方は、尚つまらないだろう。

資料を配り、講習を始める。俺の視線の先には、桜庭が座っている。自然と視線が彼女に行ってしまうのは、仕方がない。

資料と契約書の説明を終え、啓発のDVDを流す。ブラインドを下げ薄暗くなった会議室は、あくびをする者も出てきた。

桜庭も例外ではなかった。DVDを流す役目をお願いしていたはずだが、彼女はすっかり夢の中だった。

桜庭の横に椅子を置き、隣に座る。

「俺はお前が好きだ」

自分でも驚く。覚悟を決めるとか、今日告白するぞと決心したわけでもなかった。

自然と口から出ていたのだ。後から考えれば、なんと無防備だったことかと、反省した。

周りに誰もいなかったから良かったものの、誰かいたらどう言い訳をしていただろう。

桜庭だけじゃなく、俺もしっかりと睡眠をとらなければ、今度は何を口走ってしまうか、怖くて仕方がない。

桜庭も、夜は眠れていないと川奈から聞いていた。

せめて、居眠りくらいは許そう。

船をこいでいる彼女が愛おしい。少し間合いを詰め、寄りかかれるようにする。

肩に頭が当たると、残念なことに、桜庭は目を開けてしまった。

「コラ」

声に出さずに口だけを動かすと、とても恥ずかしそうに顔を隠した。

あまりの可愛さに、くしゃくしゃと頭をなでてしまった。

講習の後、ばつが悪そうに謝った彼女をからかいたくなり、

「可愛い顔が見られて良かったよ」

と言った。ジョークのような口ぶりでいったが、本心だ。顔を赤らめる桜庭がさらに愛おしく感じた。