月曜日 電車を待っていると隣のホームに電車が到着して発車する。何気に見ていると 目が合った…。カフェのリス?
一瞬だったから確信は無いけどきっと彼女だ。
電車を降り会社まで歩いていると同期の坂口 瑛(さかぐち あきら)と合流した。
「 おはよう」
「 おはよう 今日も暑そうだな」
「だな。 営業は外回り大変だよな、熱中症気を付けろよ」
「 システム部は涼しくていいよな 」
「 だったらシステム部来れば?」
「遠慮しておくよ。今は仕事忙しいのか?」
「 山場は過ぎたな」
「 なら、また飲みに行こうぜ 空いてる日はあるか?」
「 水曜日ならいいぞ」
「話しがあるんだ、約束だぞ 」話って何か気になるが落ち込んでいる訳ではなさそうだから、悪い話してはなさそうだな。
「了解、じゃあな」会社に着いたので別れた。
火曜日 今日も同じ電車だろうか?入ってきた電車に目を凝らす。確実に目が合い お互いに会釈した。彼女も気付いたようだ。
その日からは入ってくる電車を気にするようになった。
水曜日に瑛と同じ時間に仕事が終わり2人で馴染みの居酒屋へ行く。煮物も美味しくご飯だけでも利用する店だ。
おばちゃんに定番のつまみを頼み、ビールを飲みながら話を聞く。
「 オレ彼女が出来た!」
「 そうか、おめでとう会社の子?」なんだ話しってそういうことか。
「総務部の 杉本 桜 わかるか?」
「 なんとなくな 大人しそうな子だろ?」
「 そう、先週さ休憩室にコーヒー買いに行ったら桜が座っていてさ、桜の前を通り過ぎた時にオレの上着のボタン取れて転がったんだ。
拾ってくれただけでなく 裁縫道具あるからとロッカーへ取りに行ってボタンを縫い付けてくれたんだ!その姿にビビッと来て、そのまま告白した 」
「 速攻だな 、いつもの慎重さはどうした?」
「 なぜか今捕まえないといけないって思ったんだ」
「それで彼女はなんて答えたんだ?」
「『はい?』って」
「『はい?』は疑問系じゃないのか?」
「『はい』は『はい』だし彼氏はいないらしいから付き合うことにした」
「強引だな」
「捕まえたかったんだ。だけどさ、社内では内緒にしたいらしいから 内密でよろしくな」
「了解!」
普段は営業で念入りに計画する瑛がこんな肉食系だとは思わなかったな。
「 彰汰も好きな子出来たら報告しろよ 」
「 好き とかでは無いけど、この間 リスを見つけた」
「 リス?」
「 そう リス」と先日のカフェの出来事と朝 ホームで見掛ける話しをした。
「 それって 惚れたんじゃないのか?」
「 まだわからないよ、好きとかではないし気になるだけだから」