「はぁ‥寂しいねぇ‥」
「だよねぇ‥」
自分の席に座り、右手を見つめる萩本 芽衣(ﾊｷﾞﾓﾄ ﾒｲ)。
その隣の席で、同じポーズを取る小崎 真央(ｵｻﾞｷ ﾏｵ)。
「ってか、ため息付いたら幸せ逃げてくよ？」
そのセリフ‥嫌になるほどこの人生で聞いてきたよ。
ため息付いたからって本当に幸せがどこかに行くわけじゃないし、幸せは自分で掴むものでしょ？
だから、逃げたってまた掴まえればいいだけのこと。
「それに、芽衣にはちゃんといるじゃん！」
小指を立てながら言う真央。
そう。
あたしには付き合って1ヶ月の彼氏がいる。
なのにため息なんて変って思うかもだけど、それにはちゃんとした理由が‥
「あのさ‥あれ見てみなよ」
あたしの指差す先には、女子と仲良さ気に話す彼氏、遠藤 智樹(ｴﾝﾄﾞｳ ﾄｼｷ)の姿。
彼の手元を見ると、相手の子と手を繋いでいるのである。
考えられるであろうか。
彼女以外の女子と手を繋ぐこと。
それに、あたしだってまだ1回も繋いだことがない。
もう中3なんだし、手ぐらいいいのでは？と思う。
でも、彼は1度もそれを許してくれたことがない。
理由はさっぱり分からない。
あたしのことは好きって言ってくれるのに‥何が駄目なのだろうか。
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