買い出しのとき、お米を五キロ買うと『重たくて腕がちぎれる』といつも文句を言っているのが嘘みたいに、がっちりと押さえ込んでいて動けない。

何度か抵抗したものの、圧倒的な力の差に、この体勢を私の意志だけでどうにかするのは無理だと判断してひとつ息をはいた。

落ち着け、落ち着け……と自分に言い聞かせながらゆっくりと見上げると、いつもとは違う感情を浮かべた氷室さんが私を見ていた。

心臓がドクッと跳ねたのを皮切りに、騒がしく動き出す。
体中に響くそれは警告音のようで、危険だと知らせる音が頭からつま先までを駆け巡っていた。

それでも平静を装い視線を返していると、氷室さんが言う。

「考えたんだけどさ、鈴、俺でもよくない?」

あまりに突拍子もないことを言われ「は?」と声がもれた。
でも「俺と結婚すればよくない?」と続けられ……パチパチと目をしばたたく。

驚きながらも言葉を頭で理解すると、まばたきするごとに冷静になっていった。

いつもとは雰囲気の違う氷室さんを前に感じていた緊張や恐怖が霧散していく。
真っ直ぐに見つめ返していると、氷室さんが続ける。