部屋の中ではお互いの想いを確認したばかりだったし……甘い雰囲気を引きずっていたのは否めない。

通路に出てから「ここまででいい」と目を細め頭を撫でてくれる四宮さんに、私はされるがままだった。
大きな手が甘やかしてくれるのが嬉しくてドキドキして、幸せを嚙みしめていた。

だから、ちょうど帰宅した氷室さんに気付かなかった。

氷室さんを視界で確認した途端に恥ずかしさから焦った私とは違い、毅然としていた四宮さんは、もしかしたら私よりも前に氷室さんの視線に気付いていたのかもしれない。

すぐに「ちょうどよかった。話がある」と切り出した四宮さんの横顔を見て、氷室さんがついた嘘の一件を思い出した私は、「とりあえず、私が最初に話してみてもいいですか?」と四宮さんに頼み……今、というわけだった。

まずはふたりきりで話したかったので、四宮さんには鍵を預け私の部屋で待ってもらっている。

四宮さんと氷室さんの関係が軽薄なものだと思っているわけではないけれど、私だけの方が、氷室さんが本音を言うんじゃないかと思ったからだ。

〝いちゃついてた〟の話は無視して、クローゼットを閉めた氷室さんに「なんで嘘ついたんですか?」と再度質問する。

大きなベッドにドサッと腰を下ろした氷室さんが「さぁ。なんでだっけ」ととぼけるので、近づき目の前に仁王立ちして口を開いた。