「……どうもしないです。というか、氷室さんは私をそういう目では見ていない……」
「氷室と俺、同時に迫られたらどちらの手をとる?」

話している途中で問いを変えられ、目を見開く。
四宮さんがどう考え氷室さんの話を持ち出したのかを理解し、ゆっくりと口を開いた。

「氷室さんとはもう十年以上の付き合いになりますし、たしかに四宮さんの言う通り幼馴染という枠には収まらないかもしれません。氷室さんと一緒にいるとそれが自然というか、気が楽です。私にない部分を持っているから、助けられたこともたくさんあります」

詰将棋みたいに、なんでもひとつひとつしっかり考えてしまう私にとって、氷室さんの適当さは救いだった。
話していると肩の力が抜け落ち、リラックスできる。

一方の四宮さんは……。

「四宮さんと一緒にいると……息が苦しくなります」

そう告げた途端、四宮さんが目を見開いたまま停止する。
それを見て、言葉選びを間違えたと慌てて口を開いた。

「ち、違います! そういう意味じゃなくて……あ、いえ。嘘ではないんですけど、違うんです」

膝の上に置いた手をギュッと握りしめる。
四宮さんは何度も好意を伝えてきてくれているというのに、私が自分の気持ちを口にするのは初めてで……それなのに、その一回すら上手にできない自分が情けない。

〝好き〟だと伝えればいいのはわかっていても、どういう文章で、どういう脈略で言葉を作ればいいのかがわからなくて混乱していた。

告白は、こんなにも緊張を伴うものなんだと初めて知った。
ドコドコ鳴る心臓は、弾みすぎて今にも口から飛び出すんじゃないかと心配になるほどだ。