その言葉に驚く。

私も、氷室さんが嘘をついたなんて未だに信じられないし、なにか事情があったのだろうかと考えていた。

私が知る限り、唯一、氷室さんがついた今回の嘘は、子供がつくような軽いものではなく、四宮さんと私の関係をこじらせるものだ。

大げさに言えば四宮さんを侮辱する内容。

氷室さんはあんなだけど、人の痛みがわからない人ではない。遊ぶ相手だってきちんと自分と似た恋愛観の人を選んでいる。

そんな氷室さんが何も考えずにあんな嘘をついたとは考えにくい。

それを、まさか四宮さんも気付いているとは思わなかったから驚いたけれど、四宮さんと氷室さんは大学からの仲だと思い出すと納得できた。

四宮さんは腐れ縁なんて言うけれど、やっぱりしっかり氷室さんを見ている証拠だ。
四宮さんらしくて、真面目な話なのにふっと口元が緩みそうになった。

「私もそう思っています。あんなですけど、誰かを騙して傷つけて喜ぶような人ではないので」

四宮さんは私の意見に小さくうなずいてから一度目を伏せ、そして再度私を見た。

「鈴奈と氷室の関係は、ただの幼馴染という枠からは少し外れているように思う。ふたりがそれでいいなら俺が口を出すものでもないと考えてきたが……もしも氷室の鈴奈に対する気持ちが恋愛感情だった場合、鈴奈はどうする?」