「あーあ、どっかにイケメン落ちてないかなぁ……」


バスが大きく揺れる。


「わ!」


ボーッとしていた私は、我に返った。


バスが少しずつ速度を落とし、やがてバス停に止まる。


「あの、すいません、ちょっと待ってください!」


近くで大声がする。


「やべぇ、やべぇ……」


イケメンがバスの床に這いつくばっていた。


「……お、落ちてた!」


「え?」


目が合う。


「あぁ、拾ってくれたの? ありがとう!」


彼はニカッと笑って、こちらに手を差し出してくる。


微かに胸が高鳴った。


「えっと……?」


よく見ると、彼は床に落ちた文房具やら、チョコレートやらを拾っていた。


こんなにたくさん……モテるんだろうなあ。


たぶん、さっきの大きな揺れでカバンをひっくり返したのだろう。