俺は、本気で好きになったあの人を忘れられるわけなかった。
 
 俺に、キスを求めるわけでもない。顔を売るわけでもない。



 本気で、本当に好きだった。あの人と付き合えたのは奇跡だった。

 いつになっても、比べてしまっていた。あの人と。



 あの人の名前は、波(なみ)だった。素直でいい奴だった。

 でも、あいつには彼氏がいたんだ。俺に助けを求めていた。


 束縛が激しくて、暴力もあった。何も言えない波を俺は気づかなかっ

 た。


 波に付き合ってる奴がいることも、暴力をうけていることも。

 波が、本当に俺を好きだったのかはわからなかった。