「希空ちゃん、話を聞いてくれてありがとう」
真宙くんは話をしている間、とても辛そうだった。
痛いくらいに伝わった。
真宙くんの気持ちが。
「あ、そうだ、それから……
美空、学校に行かなくなったときくらいから心療内科に通院してるんだ」
心療内科……。
「この近くにある心療内科だよ」
その心療内科って……。
真宙くんは、美空さんが通院している心療内科の名前を言った。
そこは、私も通院している心療内科だった。
美空さんも私と同じ心療内科に通院している。
こういうふうに思うのは、ちょっとあれかもしれないけれど。
何か縁を感じる。
そう感じた私は、こう思い始めていた。
美空さんと話をしてみたい、と。
同じ心療内科に通院している者同士、通じ合えるかもしれない。
心の痛みを分かち合うことで、少しだけ気持ちが楽になるかもしれない。
とは思っても、美空さんの気持ちは少しも楽にはならないかもしれない。
だけど。
何もしないではいられない。
大切な友達の妹さんが心に傷を負っているのに何もしないなんて、そんなことはできない。
……でも。
真宙くんにお願いすることができるのだろうか。
美空さんに会いたいと。
真宙くんは美空さんと一年間、口を利くことができていない。
だから真宙くんには、どう言えばいいのだろう。
こうなったら単刀直入に『美空さんと話がしてみたい』と言おうか。
でも。
真宙くんは美空さんと口を利くことができていない。
だから美空さんに伝えてもらうことができない。
じゃあ、どうすれば……。
そうだ、手紙はどうだろう。
今の私の気持ちを書いた手紙を用意する。
その手紙を真宙くんが美空さんの部屋のドアのすき間に挟む。
その手紙を美空さんが気付き、その手紙を読む。
そうしたら美空さんに私の気持ちが伝わる。
って。
ちょっと待って。
一つだけ問題が。
美空さんからしてみれば『何で会って話がしたいの』ということになってしまう恐れが。
美空さんにとっては人と話をすることは恐怖でしかないはず。
それなのに、いきなり知らない人が話がしたいと言っても、美空さんは警戒するだろう。
だとすれば、美空さんと話をするということは不可能に近いということになってしまう。
どうしよう。
このままでは美空さんと話をすることが実現できなくなってしまう。
一体どうすれば……。
あ……。