黒川さんからとんでもない約束をさせられてから一週間が経った。



 この一週間。
 登校時間を十分早くしている。

 真宙くんと時間が合わないように。

 真宙くんと一緒に登校しないように。


 本当は。
 こんなこと。
 したくないのに……。



 * * *


 放課後。


 今日は図書室に本を返しに行くため、桜ちゃんには先に帰ってもらった。



 本を返し終え。
 学校を出た。

 最寄り駅まで歩いていると。


「希空ちゃん‼」


 ……‼


 後ろから声がした。


 この声は……。


 恐る恐る振り返る。


「……真宙くん……」


 やっぱり。

 声をかけたのは真宙くんだった。


 軽く走って私に追いついた真宙くんは少しだけ息を切らしている。


「先週、一緒に登校した以来だね。
 すごく久しぶりに感じる」


 笑顔の真宙くん。


「最近、希空ちゃんと登校時間、合わないよね」


「……うん……」


 どうしよう。

 真宙くんと関わらないで。
 そう黒川さんに言われているのに。


 今こうして真宙くんと一緒にいるところを。
 黒川さんに見られてしまったら……。