なぜだろう。
 黒川さんが笑顔になればなるほど。
 何とも言えないくらいの恐怖に包まれる。

 その恐怖が全身をゾクッとさせた。

 そのせいか、身体はガチガチに固まってしまい身動きがとれない。

 そうなってしまった私の心の中は。
 焦りと恐怖でパニックになりそうだった。


 こっ……これはまずい……‼
 そう思い、黒川さんから目を逸らそうと……。

 けれど。
 顔も動かなければ目も動かすことができない。

 まるで黒川さんの笑顔が私の全身を縛り付けているような。
 そんなふうにも思えるくらい。
 黒川さんの笑顔は恐怖で威圧的だった。



「じゃ~あ~」


 そんな中、黒川さんは再び口を開いた。


「麻倉さんには関係ないよね」


 ……?

 関係ない……?
 何が……?


「私が青野くんと付き合うようになっても」


 ……‼

 真宙くんと黒川さんが……?

 驚きのあまり。
 全く声が出なかった。


 そんな中、黒川さんの話は続く。


「私ね、一年生のときから青野くんのことが好きなの」


 え……。

 黒川さんが真宙くんのことを……。


 どうしてだろう。
 黒川さんが真宙くんのことを好きだって聞いた瞬間。
 胸の奥がぎゅって締め付けられるような感じがした。


「一年生のときからと言っても、
 そのときは青野くんと一緒のクラスじゃなかったの」


 ということは、今年度は真宙くんと同じクラスということ……?


「青野くん、一年生の頃から学年の中で有名だったでしょ」


 うん。私も一年生の頃から真宙くんの名前だけは知っていた。


「だから興味があった。青野くんって、どんな人なんだろうって。
 だから、こっそり青野くんのことを見に行ったの。
 青野くんのことを見たのは、そのときが初めて」


 …………。


「初めて青野くんのことを見て、一瞬で好きになったの」


 私は……。
 何を聞かされているのだろう。