真宙くんのあまりにも淡白な反応に少し驚いてしまった。
真宙くんは本当に『blue sky』の存在を知らないのだと思った。
「なんか、ちょっとびっくり」
「え? びっくり?」
「うん、だってね、『blue sky』って私たちの世代にとても人気なの。
だから真宙くんが『blue sky』のことを知らなくて、
ちょっとびっくりしちゃって」
「そんなんだ」
興味なさそうな真宙くん。
そんな真宙くんのことを見て思った。
真宙くんはいないのかな。
お気に入りの歌手や俳優。
「真宙くんはいる? お気に入りの芸能人とか誰か」
そう思っていたら。
無意識のうちに訊いていた。
……珍しい。
私が積極的に他人に質問をするなんて。
そんな自分に驚いていた。
無意識のうちにとはいえ。
いつもの私なら、なかなか言葉にすることができない。
それなのに今日の私は、すんなりと言葉にすることができている。
それは、私にとって大きな進歩。
……進歩……?
これは進歩なのだろうか……?
本当に誰にでもできるようになったのか……?
……ううん。
できない。
このようにできているのは……たぶん……。
「特にいない、かな」
『う~ん』と少しだけ考えた後。
真宙くんはそう返答した。
「そうなんだ」
『blue sky』だけではなく、他の芸能人にも興味がないみたい。
「希空ちゃんは好きなの? 『blue sky』のこと」
次は真宙くんがそう訊いた。
「うん」
私は『blue sky』のファン。
これからも『blue sky』のことを応援していきたい。
「そうなんだ」
穏やかな笑顔の真宙くん。
それから、しばらく私と真宙くんは一緒にその曲を聴いていた。